経済分析② ~属性が高いアラフィフは資金調達が有利~

お金を借りるときに、初めて「属性」という言葉を聞きました。太陽光業者の方が「属性が高い」「属性が低い」ということをしきりに気にされるのです。属性は単に年収だけではなく、年齢や、その方が抱える負債額の合計で総合的に判断されるようです。裏事情はわかりませんが、どれぐらい借金があるか、金融機関は把握しているようです。

 

年収の低い方や、借り入れが多い方は属性が低く、資金調達は容易ではありません。ある販売業者さんから伺いましたが、20代、30代の方が投資をしようと思っても、属性の問題で資金調達が難しいようです。見込み客の6割は、信販会社から融資がおりません。

 

年収が比較的高いアラフィフは、高い属性に入るようですので、相対的に借り入れが容易となります。販売業者さんも、融資が付きにくい方より融資が付くアラフィフに売り込もうとします。融資がおりる可能性が相対的に高いからです。会社を休んで資金調達に駆けずり回ることなく、容易に資金調達ができるのもアラフィフの強みです。

 

長期プライムレートが上昇したことにより、6月から信販会社の借入金利が0.15%上昇したようです。最近ある販売店2社に伺ったところ、2社とも2.15%から2.30%に上がったようです。

資金調達にまで話が発展しましたが、経済分析でも、参入に有利といえます。

経済分析① ~アベノミクスでカネ余りとマイナス金利に~

2012年に第2次安倍政権が誕生し、アベノミクスの3本の矢が放たれました。第1の矢は金融緩和、第2は財政出動、第3は成長戦略です。成功か失敗だったかは置いておきますが、事実として一番インパクトがあったのは大規模金融緩和だったのではないでしょうか。経済の専門家ではないので詳しいことはわかりませんが、事実としては金利が大幅に下がり、マイナス金利に突入しました。さすがにマイナス金利は一過性だと思われましたが、現在にいたるまで、ずっと続いています。

「円」という貨幣の価値が下がり、金余り現象を引き起こしました。投資家目線で見れば、低金利で資金調達が容易になりました。私の住宅ローンも15年前と比べ半分程度で、1%を大きく割り込んでいます。

事業資金の調達金利はもう少し高いのですが、金融機関は喜んで貸してくれました。銀行や政策金融公庫は、融資決定までに時間を要しますが、信販会社はすぐに判断してくれます。自己資本だけの融資であれば、サラリーマンで太陽光発電所を購入できる方はかなり少ないと思います。機動的にお金を貸してくださる金融機関があるので、資金調達が容易となり、発電所を購入できます。

私の場合、4基の発電所で約9千万円の借り入れをしました。政策金融公庫と信販会社2社でほぼ半分づつ借りています。それほど苦労せず、すんなり借りられました。

政治分析③ ~FITの廃止や条例で不利にならないか?

FIT制度が数年後廃止になるのではないか、また既存発電所でもFIT単価を下げるようなことがあるのではないかとも考えました。実際にスペインではFIT制度を突然やめてしまったようです。もし日本でそんなことが起きたら、大混乱をきたすでしょう。投資家が魅力を感じなくなり、再エネ投資をやめてしまいます。そう考えると、日本では心配ないかもしれません。再エネ賦課金という国民の負担と再エネ投資家のFIT終了後のイグジットをいかに防ぐかが、国の腕の見せ所でしょう。太陽光発電市場から投資家が退場してしまうと新たな投資が必要になるので、事業者を退出させないよう末永く存続させようとする力が働くでしょう。

 

一方で、太陽光発電投資が過熱し、自然破壊や乱開発をして大規模発電所建設が次々に計画されたので、自治体が景観条例を作り、地域住民の反対運動が盛んになりアセスメントが強化されています。最近も長野県でメガソーラーの計画が、住民の合意が得られず頓挫しています。地域の住民にとっては、故郷の里山や生態系が破壊されることに対しては抵抗があります。これらは大規模高圧発電所を建設される方は要注意です。サラリーマンが購入する低圧発電所はほとんど関係ないようにも思いますが、地域住民の方々の感情には配慮が必要だと思います。

 

法制度や政治的な流れで見れば、国がインセンティブを与えて参入を促しているので、参入すべしということになります。またCO2を排出する化石燃料原発に対する国民感情を考えると、第5次エネルギー計画以上に再エネを伸ばさざるを得ません。ただし、再エネに優遇しすぎたので、少し揺り戻しが来ることや地方自治体の新たな条例、規制もありえますが、低圧発電所についてはGOと捉えました。

政治分析② 第5次エネルギー計画で、再エネを主力電源に!

次に注目したいのは、第5次エネルギー計画です。この計画で初めて電源における再エネ比率の目標が掲げられました。政府は2030年までに再エネ比率を2017年の16%から22~24%に引き上げると国際社会に宣言したのです。欧州と違い、日本は安定的に風が吹かないので、風力ではなく太陽光発電が再エネの主力になると考えました。日本は再エネ普及のために、太陽光にはインセンティブを与え続けるだろうと思われます。

 

もう一つ、第5次エネルギー計画では原発を再稼働させて、やはり20~22%程度と主力電源に育てる計画です。CO2を排出しない、発電コストが低いという点では、競争力のある電源だと言えます。しかし、原発事故で今なお原発に根強い反対がある中で、本当に再稼働ができるでしょうか。関電の贈収賄事件で、原発の再稼働は極めて難しくなったと思います。表向きは原発の良い面が強調されていますが、結局は、利権の温床ではないかと思った国民は多いと思います。再稼働は政治家や企業経営者とカネの問題で原発アレルギーがますます強くなりました。

 

自民と連立を組む公明党は明確に「原発ゼロの社会を作る」と公言しています。さすがに自民党も折れざるを得ないのではないでしょうか。2030年に原発比率20-22%を掲げていますが、2017年で発電に占める原発比率は3%程度です。10年後には7倍、約30基の原発を再稼働できるでしょうか。原発で埋まらない20%はどこで埋めるのでしょうか。CO2やN0Xを排出する化石燃料はあり得ないと思います。そうなれば、再生可能エネルギーしかないでしょう。

 

次回は、地上自治体の条例の影響を分析します。

政治分析① ~国が再エネ参入にインセンティブ~

再エネビジネスの特徴はなんといってもFIT(固定価格買取制度)法にあります。簡単に言うと、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が20年間、同価格で買い取ることを国が義務付ける制度です。20年間決められた価格で買い取りをしてくれるというのは、一般的なビジネスでは全く考えられないぐらい優遇された制度です。2012年から固定価格買取制度が始まりましたが、12年は40円/kwです。家庭用電力は28円/kwぐらいですから、実にユーザーが支払う価格より12円も高く買ってくれたのです。電力会社には逆ザヤですが、法律で決められたものです。

 

固定価格買取はわかりますが、ここまで高い単価に設定したのかを考えますと、インセンティブを与え、多くの投資家を呼び込みたかったという政府の思惑が垣間見えます。常識的に考えれば、せいぜい家庭用電気料金の20円代後半ぐらいで、プレミアムはなしというぐらいじゃないでしょうか。

 

低圧太陽光のFIT価格は2019年度14円となり、実質的にFIT制度は終了し、FIP制度に移行します。FIP制度は卸市場などで販売した価格にプレミアムを上乗せする⽅式です。再エネ賦課金が増え、国民の負担が増加しすぎたためだと言われています。再エネ導入の優遇策はおしまいで、ようやく市場原理による正当な競争環境になります。

 

太陽光の施工業者さんも今まで比較的楽に儲けてきましたが、ここからコスト削減競争が始まります。いかに低コストで発電所を作るかが求められます。これができないと淘汰されていきます。施工会社は比較的小規模で、資金力がないので、倒産が増えることも想定されます。また、施工業というビジネスモデルを転換して、メンテナンス会社なる、電力会社になるなど、転換が求められます。

 

次回は第5次エネルギー計画の影響を考えてみます。

マクロ環境分析をして事業性を評価する

太陽光販売業者さんの営業は、言葉巧みに分譲型太陽光発電所を勧めます。確かにお話を聞くと、こんなに魅力的な投資はないように思います。うまい話ほど疑わねばなりません。きっとどこかに嘘が潜んでいるに違いない…。

 

環境分野の事業というのは初めての経験なので、ビジネスマンらしく、ちゃんとPEST分析とファイブ・フォース分析ぐらいはやろうかと思いました。PESTとはPolitics(法・政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの頭文字をとったものです。マクロ分析なので、ざっくりとした外部環境になりますが、ビジネスは常に世の中全体の変化、つまり「マクロ環境」に影響を受けます。中長期にわたって発電業界がどうなるかを見ておきたいと思いました。

 

ファイブ・フォース分析はハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授が考案した方法で、経営学でいうとポジショニング論になります。万能ではないと批判する人も多いのですが、私は結構好きです。新規事業を担当時、業界全体を俯瞰して把握したいときによくこの手法を使って分析しました。

 

資金調達するとはいえ、長期間にわたり個人でリスクテイクして数千万円のお金を投資するのですから、これぐらいはやっておかないと後で後悔することになります。

 

総論でいえば、PEST分析の結果はP・E・S・Tとも、再生可能エネルギー事業をする人は非常に良い環境が整っているといえます。次回以降、それそれの項目でどう分析したのかに触れたいと思います。

太陽光か風力か?

再生可能エネルビー事業を調べ始めたのは2017年の12月頃でした。投資家目線でいえば、「すでに太陽光バブルがはじけて魅力が薄れ、これからは風力発電だ」という雰囲気がありました。中国企業の参入も多く、太陽光業者もこぞって風力に参入していました。展示会では各ブースに風力発電のレブリカが飾ってありました。確かFIT単価も高く非常に魅力的でした。

 

 

FIT単価

表面利回り

分譲価格

太陽光発電(低圧)

21~24円

9~11%

2~3千万円

風力発電(20KW以下)

55円

13~15%

4~5千万円

 

数字を比べてみると風力発電の方が魅力的に見えますが、風力には心配の種がありました。

 

  • 風が安定的に吹くのか
  • リスク
  • 環境負荷
  • 資金調達

 

私が以前担当していた事業の工場が大井川流域にありました。冬はものすごく強い風が吹きます。御前崎や近隣の市にも風力発電機が設置されていました。そこで、わが社の工場の敷地に風力発電機を設置し、コストダウンと環境負荷低減を目指そうという案が持ち上がりました。新幹線の車窓から工場が見えるので、企業イメージアップの宣伝効果も見込めます。そしてフィジビリティスタディが始まりました。結果は、風が吹くのは冬の一時期で、ペイしないというものでした。投資はしたが、風が吹かず多額の負債を背負うわけにはいきません。

安定して風が吹いたとしてしても、近隣に風力発電機が設置されると、風の向きが変わり、風が吹かなくなる可能性もあります。これも大きなリスクとなります。

 

風力発電機は大きいので、故障したり、羽が飛んでいってしまうと周辺に与える影響も大きく、太陽光パネルの比ではありません。メンテナンスも太陽光と比べると非常に大がかかりとなり、コストもかかります。FIT終了後の撤収費用もかなりかかります。

 

風力発電は様々な負の部分もあります。一つは騒音問題です。大きな音がしますので、住宅地の周辺には立てられません。また大きなブレードを運ぶには、大きな道を作る必要があります。ブレードを運ぶために、森林を伐採するのは環境負荷となり、本末転倒ともいえます。

 

4番目の資金ですが、太陽光発電所の約2倍します。2017年ごろは、太陽光発電所は25百万円、風力発電所は50百万円しました。額が大きいので資金調達は容易ではありません。富裕層方ではないとできない投資でした。サラリーマンが投資をすると、最低2か所から調達する必要がありました。政策金融公庫+信販または地銀という組み合わせになります。スルガ銀行から提案を受けたことがありますが、金利が6-7%と高く、金融公庫と合わせ技でも3-4%となりました。

 

従いましてサラリーマンにとっては、ハイリスク・ハイリターンの投資となります。太陽光と風力と両方取り扱っている業者さんに相談すると、十中八九、太陽光を進められました。ある施工業者の営業は「風力は男のロマンです。風が吹けば大儲け。吹かなければ失敗。成功確率は40%。60%の方が失敗しています。」

 

これではばくちに近いです。中流サラリーマンには、50百万円をどぶに捨てることはできません。とても無理だと思いました。結局、お日様さえ登れば安定した収入が見込める太陽光発電を選びました。ちなみにこの施工業者さんは、1年後風力発電から撤退しました。