5F分析①市場競争

今回のシリーズは、5F分析です。

まずは市場環境から考察していきます。

 

この事業はFIT法で守られているため、実質的に競合がいません。仮に隣に発電所ができても、競合になりません。例えば、不動産投資の場合だと、自分が中古の1棟アパートを持っていたとします。近隣に新しいアパートができると、入居者や家賃に影響が出やすくなります。同じ家賃であれば、新しいところに住みたいと思います。近隣にアパートが値下げをすれば、どうしても相場に引っ張られてしまいます。もちろん、対策を立てて空室にならないよう、あるいは家賃が下がらないような工夫はできます。しかし太陽光発電所の場合、売電価格がFIT法で決められているので、近隣に発電所ができても20年間は保証されます。従って、20年間は競合がいないと言ってよいでしょう。

 

別の見方をすれば、物件を購入するときの投資家が競合となります。不動産投資と似ていますが、良い物件は他の投資家もほしいため、競合することになります。販売店にとってみれば、①キャッシュを持っていること、②属性が高いこと、③決断が速い人が条件となります。太陽光の場合、融資を受けて投資するケースが多いです。ほとんどがフルローン(土地を除く)になります。販売店が嫌がるのは、金融機関の審査が通らない場合です。せっかく手間をかけたのにローンが通らないと、別の顧客を探さねばなりません。これは販売店にとって、販売の生産性が落ちることを意味しています。

 

50代のサラリーマンで役職についていると、比較的属性は高いほうになりますが、医者や士業、富裕層には負けてしまいます。私も何度か負けてしまったことがありました。

 

市場の特性としては、太陽光発電再生可能エネルギーの中では、最も伸びています。最近は風力、特に大規模洋上風力がニュースになることが多いのですが、伸び率で言えば圧倒的に太陽光発電です。

 

一方、売電単価は年々下がってきています。これは、後で参入すればするほど不利になるということです。販売店は40円の時代も表面利回り10%、14円でも10%で変わりませんという説明をしますが、40円と14円では稼ぎ出す売電金額のトータルが全く違います。FIT単価が下がると、いくら発電しても固定費や税金を回収することが難しくなります。

 

低圧発電所の場合、実質的には14円で権利取得が終了したと言われています。FIT権利が終わることが想定される。あと2-3年でFIT14円の分譲発電所も発売終了するのではないでしょうか。低圧終了後は自家消費型が主流となっていくのではないかと思われます。

 

やや脱線しましたが、私が投資した2018年で言えば、市場環境は非常に良かったと言えます。市場環境はだんだん厳しくなってきましたが、今でも発電所を購入できれば、競合に影響されることなくビジネスが継続できますので、市場参入のタイミングは良いと言えます。

外部環境分析(PEST)まとめ ~絶好の参入チャンス~

これまで見てきた通り、外部環境分析では、①政治 〇 ②経済 〇 ③社会 〇 ④技術 〇ということになります。このようにすべての面において良好ということはあまりありません。例えば、政治面はチャンスだが、経済環境がよくないというように、判断に迷うケースがほとんどです。このように外部環境分析のPESTすべての項目が良好なので、現在は絶好の参入のチャンスであるということが言えます。年々FIT単価は落ちてきますので、いち早く参入すべきです。

 

次回は、競争戦略で有名なハーバード大学教授マイケル・ポーター氏が考案したファイブ・フォース分析手法を使って、太陽光発電市場について考察していきたいと思います。

 

 

技術分析③ ~再エネを主力電源に押し上げるのは蓄電池技術~

再エネの普及がむずかしいのは、不安定電源だからです。電力は需要と供給のバランスをとる必要があります。太陽光発電は夜は発電しませんし、風力は風がなければ発電しません。その調整弁になっているのが火力発電です。しかし火力発電も大型のタービンを回しているので、簡単に止めたり、動かしたりできる代物ではありません。工場の生産で考えれば、ラインをとめず、連続生産するのが一番安定していますし、低コストでできます。


ちょこちょこ停止していたら、安定生産はできませんし、製造コストが高くなります。
これでは、主力電源にはなりえません。

 

再エネを安定した電源にするには、蓄電池が必要だと思います。蓄電池に貯めておけば、需要に合わせて電気を放出できれば、主力電源になりえます。また、過積載の太陽光発電所の場合、晴天の時は、ピークカットがおきて、かなりの量の電気を捨てています。私の発電所でも、5月になると8:30にピークカットになります。せっかく発電しているのにもったいないと思います。

 

家庭では蓄電池が普及し始めてきましたが、蓄電池は100万円以上するらしく、経済的メリットがあまりないとも聞きます。
蓄電池ははリチウムイオン電池が主流ですが、次世代としてNAS電池(日本ガイシ)、鉛蓄電池、最近ではバイポーラー型(古河電工、古河電気)がリチウムイオン電池の半分のコストでできるそうで、商業化に向けて踏み出そうとしています。

 

また、畜電池ではなく、再エネで水素を作り、貯蓄するという水素社会の取り組みも検討されています。北九州市では水素を供給する取り組みが進んでいますが、インフラ整備が大変なので、実現しても相当先のような気がします。インフラが間に合わないので売れていませんが、水素燃料自動車(FCV)にも弾みがつくかもしれません。

 

IoTが進化することで、HEMSやBEMSといったエネルギーマネジメントシステムでスマートコミュニティをつくることや、ブロックチェーン技術を活用して、発電事業者が直接消費者に電力を販売するP2P電力取引の開発も実用化段階に来ています。

 

今までFITが終われば終了、出口戦略がないと言われてきた太陽光発電ですが、様々な技術革新によって、卒FIT後のビジネスの可能性が出てきます。

 

現時点では、卒FIT後は7~8円/kwhで取引されると言われていますが、電力会社に販売するのでも、蓄電池を設置して売電量を増加するもよし、P2Pで電力取引ができれば、20円以上で販売もできそうです。

 

最近は、卒FITの事業を見越して、単価が低いが規模が大きい、過積載率200%超の物件が人気だと聞きました。例えば、以下の二つを比べると、FIT単価は高くて容量が小さいものより、FIT単価が低くても容量が大きいほうが、卒FITビジネスは有利だということがわかります。

発電所 70kw 75,600kwh 21円 1580千円
発電所 110kw 113,000kwh 14円 1582千円

仮に卒FIT後の売電価格が8円だとすると、

A発電所は 8円×75.6千kwh = 605千円
発電所は 8円×113千kwh = 904千円

上記の例でいえば、年間の売電金額で約300千円の差になります。
発電所の価格が同じであれば、容量の大きいB発電所の方が有利となります。

 

太陽光発電周辺の技術は、まだ成長期にあり、かなりのスピードで技術革新が進展しています。それによっていろいろなビジネスの可能性も出てきそうです。

 

技術分析② ~過積載を支えるパワコンがもたらすもの~

パワコンについては、3年前で変換効率が95~96%が主流でした。今は98%という高効率のパワコンも出てきました。しかし3%程度ですし、技術としてはサチレーションを起こしていると思います。業者の方によると、パワコンもどんどん価格下落しているそうです。

 

また、過積載を支えるのもパワコンの技術革新のようです。過積載の発電所が主流になったのは、パワコンの耐久性が上がったからです。過積載に対応できないメーカーはどんどん淘汰されていくでしょう。日本企業では、オムロンパナソニック三菱電機が御三家ですが、最近はHUAWAYのパワコンをよく見かけるようになりました。小型軽量に加え高性能なので施工業者の評判も高いようです。

私が最初に購入した発電所は、92kwの多結晶シリコンでしたが、400坪以上の土地が必要でした。昨年購入した発電所は108kwの単結晶ですが、土地面積は300坪強しかありません。FIT単価が違うので一概には比較できませんが、108kwの方が15%安くなっています。


太陽光発電所の投資利回りは数年前から現在までほぼ10%前後ですが、このような技術革新によるコスト低減があるからだと思われます。

 

従って、技術面でも参入には、非常に良い環境であると言えます。次回は、私の妄想がかなり入りますが、技術革新が進めばどういう社会になるのか、もう少し掘り下げていきたいと思います。

 

技術分析① ~技術革新がもたらす恩恵~

太陽光発電所は、大きく分けると、発電する太陽電池と直流から交流に変えるパワーコンディショナー(通称、パワコン)の二つから成り立っています。私が技術面でもう一つ注目しているのは蓄電池です。まだ低圧、高圧の発電所に蓄電池が普及段階ではありませんが、蓄電池の技術革新が進むと、再エネ特有の不安定さが解消され、一気にマーケットが様変わりし、再生可能エネルギーが普及すると考えているからです。

 

まず、太陽電池ですが、NEDOが中心となって技術革新が進んでおり、発電効率はどんどん高くなっています。化合物の技術開発が進み最新技術では、発電効率が40%に達しているようです。しかしまだ特殊な技術であり、商用レベルになっていません。投資検討した2017年当時では、商用パネルの主流はシリコン多結晶パネルで、変換効率は17-18%ぐらいだったと思います。単結晶はもっと高効率でしたが価格が高く、産業用のパネルにはほとんど使用されていませんでした。現在では、変換効率がどんどん上がり、20%超が主流になってきました。またパネルも多結晶から単結晶にかわってきたり、量産効果から、パネルの価格はずっと下がってきました。

 

太陽電池の効率が上がる一番のメリットはコストダウンです。パソコンのCPUに似ています。ムーアの法則ほど早くはありませんが、太陽電池でも効いているように感じました。たとえば、100kwの発電所を作るときに、17%のパネルと、22%のパネルでは5%の効率差が出てきます。これは、5%分のパネルの枚数が少なくて済むということです。そうすると、極端ですが、5%狭い土地でもよいということになります。

 

社会分析② ~投資家(資本)も銀行(負債)も環境重視~

投資側でいえば「ESG投資」すなわち、環境、社会、ガバナンスを重視し、投資することです。すなわち環境などESGやSDGsに取り組まない企業には投資をしないということになります。ESGを重視した投資信託の販売が好調です。また機関投資家だけではなく企業年金基金もESGを重視し、ESGに取り組んでいる企業の株を購入する傾向にあります。従って、ESGに積極的に取り組まない企業の株価は下がっていきます。

 

最近は国内メガバンクも石炭火力には投融資しないということを発表しました。貸借対照表でいえば、負債も資本も調達できなくなると経営自体をシュリンクせざるを得ません。従って、企業は再生可能エネルギーにシフトせざるを得ないということになります。

 

しかし、日本の自然エネルギー比率は18%程度。太陽光に至っては全体の7%しかありません。まだ火力発電が75%を占めます。政府は自然エネ比率を22~24%に引き上げようとしていますが、その主役は太陽光になるとは思っています。大手が洋上風力にどんどん投資していますが、不安定で、物理的負荷の高い風力発電が再エネの主役になれるのか、注視しています。少なくとも現時点では風力発電量の伸びは僅かですし、企業によっては風力発電から撤退し始めています。

 

ESG投資が主流になりつつある中で、多くの企業は再エネをもっと調達したいと考えていますが、再エネが不足して供給が追い付いていないようです。需要と供給のバランスが崩れているので、当然、企業の調達コストは高くなる傾向にあります。
企業側で再エネの需要が増加しているということは、固定買取の20年が終了しても、ビジネスチャンスがあるということです。

 

現在、家庭用太陽光のFITが終了ましたが、卒FIT電力が8~12円/kwで取引されています。パネルの経年劣化はありますが、発電所を所有していれば、売電収入は下がるものの30年以上ビジネスを継続していける可能性が極めて高いということです。

 

最近、太陽光業者さんからは、FITの20年を過ぎた後も事業を継続するため、発電能力の大きな超過積載の発電所を購入する投資家が増えていると聞きます。私が投資を検討し始めた2017年頃は、80kw~90kwの発電所が主流でしたが、今では110~130kwも珍しくありません。

 

社会分析をしてきましたが、再エネ、特に太陽光発電は追い風ですので、参入する環境としては非常に良好と判断できます。

社会分析① ~気候変動からCO2削減が世界の潮流に~

環境に対する関心はますます高まり、全世界的に地球温暖化対策に向かっています。

古くは1970年代ローマクラブが「成長の限界」を発表し、「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と警鐘を鳴らしました。
2006年にアメリカのゴア元副大統領が出演した「不都合な真実」というドキュメンタリー映画が発表しました。環境問題啓発に貢献したとしてゴアさんがノーベル平和賞を授与されています。

最近では、17歳のスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんが地球温暖化によってもたらされるリスクを訴えている姿をよくテレビで見かけるようになりました。

世界的には、温室効果ガスのCO2を削減する取り組みが加速しています。しかし日本では、不幸な福島原発事故から、CO2削減の議論がどこかに吹き飛んでしまい、LNGや石炭を使用した火力発電にシフトしたため、CO2が大幅に増える結果になりました。放射線汚染対策が緊急度も重要度も高かったため、原発を止めざるを得なかったということです。

当時の民主党政権時代にFIT法ができ、再生可能エネルギーの普及に舵が切られました。
一つは、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーにする国際イニシアティブ「RE100」に加盟する企業が増えました。日本企業もリコー社をはじめ、現在34社が加盟しています。環境問題は企業経営として取り組むべき課題であるということを物語っています。