技術分析③ ~再エネを主力電源に押し上げるのは蓄電池技術~

再エネの普及がむずかしいのは、不安定電源だからです。電力は需要と供給のバランスをとる必要があります。太陽光発電は夜は発電しませんし、風力は風がなければ発電しません。その調整弁になっているのが火力発電です。しかし火力発電も大型のタービンを回しているので、簡単に止めたり、動かしたりできる代物ではありません。工場の生産で考えれば、ラインをとめず、連続生産するのが一番安定していますし、低コストでできます。


ちょこちょこ停止していたら、安定生産はできませんし、製造コストが高くなります。
これでは、主力電源にはなりえません。

 

再エネを安定した電源にするには、蓄電池が必要だと思います。蓄電池に貯めておけば、需要に合わせて電気を放出できれば、主力電源になりえます。また、過積載の太陽光発電所の場合、晴天の時は、ピークカットがおきて、かなりの量の電気を捨てています。私の発電所でも、5月になると8:30にピークカットになります。せっかく発電しているのにもったいないと思います。

 

家庭では蓄電池が普及し始めてきましたが、蓄電池は100万円以上するらしく、経済的メリットがあまりないとも聞きます。
蓄電池ははリチウムイオン電池が主流ですが、次世代としてNAS電池(日本ガイシ)、鉛蓄電池、最近ではバイポーラー型(古河電工、古河電気)がリチウムイオン電池の半分のコストでできるそうで、商業化に向けて踏み出そうとしています。

 

また、畜電池ではなく、再エネで水素を作り、貯蓄するという水素社会の取り組みも検討されています。北九州市では水素を供給する取り組みが進んでいますが、インフラ整備が大変なので、実現しても相当先のような気がします。インフラが間に合わないので売れていませんが、水素燃料自動車(FCV)にも弾みがつくかもしれません。

 

IoTが進化することで、HEMSやBEMSといったエネルギーマネジメントシステムでスマートコミュニティをつくることや、ブロックチェーン技術を活用して、発電事業者が直接消費者に電力を販売するP2P電力取引の開発も実用化段階に来ています。

 

今までFITが終われば終了、出口戦略がないと言われてきた太陽光発電ですが、様々な技術革新によって、卒FIT後のビジネスの可能性が出てきます。

 

現時点では、卒FIT後は7~8円/kwhで取引されると言われていますが、電力会社に販売するのでも、蓄電池を設置して売電量を増加するもよし、P2Pで電力取引ができれば、20円以上で販売もできそうです。

 

最近は、卒FITの事業を見越して、単価が低いが規模が大きい、過積載率200%超の物件が人気だと聞きました。例えば、以下の二つを比べると、FIT単価は高くて容量が小さいものより、FIT単価が低くても容量が大きいほうが、卒FITビジネスは有利だということがわかります。

発電所 70kw 75,600kwh 21円 1580千円
発電所 110kw 113,000kwh 14円 1582千円

仮に卒FIT後の売電価格が8円だとすると、

A発電所は 8円×75.6千kwh = 605千円
発電所は 8円×113千kwh = 904千円

上記の例でいえば、年間の売電金額で約300千円の差になります。
発電所の価格が同じであれば、容量の大きいB発電所の方が有利となります。

 

太陽光発電周辺の技術は、まだ成長期にあり、かなりのスピードで技術革新が進展しています。それによっていろいろなビジネスの可能性も出てきそうです。